特別扱い
今日は特別に面会許可が出た。久しぶりにあなたに直接会うことができた。
洗濯ものだけを持っていくのも味気ないので、この間、なんの記念日でもないけどプレゼントしたピアスをこっそり入れて持っていった。
嬉しいサプライズになればいいなと思ってたけど、あなたの喜ぶ顔を、画面越しではなく直接見たかったから、結局、その場で渡してしまったよ。
部屋に入ると男性とあなたが話していた。心の面をケアする専門家、あなたはそう言っていたね。
あなたはまだわたしを気遣って言ってないこともあるかも知れないけれど、検査結果、診断結果もまだ出ていないよ。
あなたはとても賢いから、先生たちの様子や状況を論理的に考えて大方の予想を立てていたね。
やりたいことはもう大体やり尽くした。あなたは何度も何度もわたしに言い聞かせるように言っていたね。
そんなことを言わないで、何にも始まっていないし、まだ、何も終わっていないんだから。一緒にこんなことしようよ、一緒に喫茶店をやろうよ、一緒にまたリノベをしようよ、旅行にも行こうよ。そうだ、猫も飼わないとね。
未来のわたしのことを心配しているあなたに、そんなことを言えば言うほど、あなたは罪悪感を感じてしまうよね。
ごめんね、ごめんねと言わせてしまってごめん。
望む未来は、そうと信じないとやってこない。だから、あなたと一緒にそう思いたいと思う。一方で、この気持ちは、あなたを失いたくない、ただのわたしのエゴだとも思う。
そんな両極の考えがずっとわたしの心のなかで、頭のなかで、ぐるぐるし続けている。
特別扱いなんかいらない。
病院からの帰り道、道端を仲良く歩く老夫婦を見かけた。
本当は半分涙が出てたかも知れないけど、その直前の喉の奥のこわばり、痛みを何度も何度も感じてしまったよ。
もっと、ずっとあなたのそばにいたいよ。
#ラブレター